ソラナミダ













「もしもし…、平瀬です。おはようございます。」




『………。……?朝から珍しいな。……って、なんだ…、まだこんな時間…?迷惑電話か~、どうした?』



電話の相手は――…木村さん。
気だるそうな言葉とは裏腹に、電話越しの声は…


優しく、私の耳に届いた。



「今日…、休暇をいただけますか?」




『…………。具合でも悪いか?それとも、昨晩…』




「いえ、そうじゃなくて…!」



おまけに、勘も鋭い。





「行きたい所が…あるんです、彼と。」




『…………。昨日はイヴ…だったな、そういえば。去年の分の…休暇だ。…行ってこい。』



「……!……はい。」















12月25日。






両親が亡くなって…、2年と1日。








リビングでコーヒーを飲む彼を見ながら……、




私は、写真立ての中で微笑む彼等へと…呟いた。







「今日……、会いに行くよ。」





待っててね、



お母さん。




貴方が残した宝物は……、今、ここに居るんだよ?




お父さん、もう…クリスマスは、一人じゃないよ。


これから…、紹介するね。








「晴海くん、一緒に行きたい所が…あるんだ。」



写真立ての側には…、あの、指輪。


私達をひき合わせ……


繋いだ、



大切な……宝物。





「行くよ。わこと一緒なら…、どこへでも。」





どうか……、


届いて欲しい。




母が伝え損なった愛と…、




彼が受け損なった愛を。





彼等の想いを、


今度は私が…、



しかっりと受け取って、繋いで…


丁寧に、紡いでいきたい。










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