ソラナミダ
晴海くんの目は至って真剣だ。


「わ。絵、上手。」


「…だろ?」


「しかも面白いし。」


「アイディアだけはいつもポンポン浮かぶんだよなあ。」



「…神様は不平等だなあ。一人の人にこんな沢山の才能あげてさ。」


「…そうでもないよ。」



「いやいや、ここで謙遜しますか?」



「…一応っ。」



はにかむ彼の姿が余りにもかわいくて、もっと見ていたくて、


そうこうしているうちに……


気づけば絵コンテがどんどん出来上がっていた。



「…まあ、確かにさ…、不平等だよなあ…。」



「…え?」



さっきの話の続き…?




「確かに俺には、沢山の発想があって…沢山の理想があって……。でも、そのどれが実現しない。…叶うこともない。」



「……え?」



鉛筆を握る手が止まる。


「たった一つなのにな、欲しいものは。なのに…、俺には与えられなかった。」


…晴海…くん?



「…1つでいいなんて羨ましい!私なんていくつも挙がっちゃうよ?」


「……。ああ、色気?」


「…ちっがーう!ん?イヤそれもまあありますが……、………うん、数えたら指が足りないね。」


「…ぶっ……。平瀬さんてアレだ、超がつくくらい、ポジティブ!」



「……あはは~何も考えてないだけかも。」


「…擦れてない。愛されて育った証拠。」


…愛されて?


そう……

見える?




「…お?もうこんな時間。コレ、俺のイチ押しコンテ。…今度感想聞かせて、【プランナー】さん。」


「え。あ…うん。」


晴海くんは、用紙を重ねてトントンっと揃えると……


それを私に差し出した。




「何しにきたのか思い出した。」





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