ソラナミダ
「クリスマスってさ、ここにいる?あ…、彼氏んとこに行く?」


「…彼氏なんていないし、ここにいるけど…?」


「今日管理人さんから聞いたんだけど、イルミネーションつけるんだって、中庭に。だから……」


「…うん?」


「あの場所に、一緒に行こ。」


「…仕事じゃなかったの?」


「…ああ、テレビ見た?あれも嘘じゃないよ、日中は仕事だから。それに、クリスマスに外出るとすぐ撮られるは噂になるわ…ちょっと面倒くさいんだよね。だから…家で過ごす予定。でもひとりも何だし。だから、平瀬さんもし嫌じゃなかったらだけど…。」


「…クリスマス、私…大嫌い。」


我慢していた感情が…、途端に溢れ出す。

それは……


本当に、突然だった。


「…ひとりは、怖い。」


「…平瀬さん?」


晴海くんが、心配そうに私を見る。


…身体が震える。


脳裏に蘇る記憶……。


クリスマスの、悲劇…。





「やっぱ、クリスマス…一緒にいよう。」


「………?」


「ふたりなら怖くないっしょ。それに…俺もひとりは嫌。」


「………。」


「だから…待ってて。絶対迎えに来るから。」


「でも…。」


「『でも』はなし。決めたから。だってさ、あそこで…、あの場所で俺ら会わなかったら今きっとこうしてない。クリスマスにはきっと、そんな顔して平瀬さん過ごしてた。だから…一緒に行こう。雪降ったら、すっげーキレイかもしれないじゃん。」


「……。」


「……返事は!?」


「…う…。」


「『う』って何だよ?」




…晴海くんが笑うと、私は嬉しくなる。


自分だけが知っている特別な顔…。


そんな、優越感があったのかもしれない。


それでも私は……


その笑顔を、どこかで独り占めしたいと願ってしまいそうで……


それだけが、怖かった。



「…こんな頑固な女、なかなかいないよな。」






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