ソラナミダ
「「あ。」」
なんの音沙汰もなかった隣りの部屋から出てきた晴海くんと、飲み会から帰ってきた私がバッタリ出くわしたのは……。
「……。あれ、晴海くん。こんばんは。」
「こんばんは。」
「お出かけ?」
「うん。平瀬さんは?」
「私は飲みの帰り~!」
「テンション高いね、酔ってる?」
「酔ってますよ~。…あれ、ドア開かないな…。」
「……カード、さしてないよ。」
「ん?あ、そーだった!えー…と、鍵、鍵……あれ、ないな。」
カバンの中を手探りするが、なかなか見つからない。
何より酔いが回っていて……
手元がおぼつかない。
カシャンっ!!
「スマフォ…落としたよ。」
「え?ああ、ありがとう。」
晴海くんの手から、スマートフォンを受け取る。
一瞬触れた指先から…熱が伝わる。
「…暑い。…飲みすぎたかな…。」
これは…
酒のせいだろうか?
「…酒に呑まれてるし。」
「ふふっ。…一枚、脱ぎますよ~。」
「…待て、ちょっ…、さすがにそれはヤバいって。」
「嘘です、さすがにそこまではできません。」
「…大丈夫…?だいぶ壊れてる感じだけど。」
「大丈夫ダイジョーブ!私、変なの!元から変だけどさ…。だって悲しくても涙が全然出ない。楽しくても上手に笑えない。…ぜ~んぶ、忘れちゃったのかなあ~…。」
「……平瀬さん?」
「それとも、忘れたいだけなのかな…。……まあ、どっちでもい~よね、そんなの。今だってさ、話するのが怖いんだ。こんな私を見られるのも嫌なのに……。あはっ…見られちゃった~…。」
「おい…?大丈夫?」
「…あ。そうそ~、この前のコンテ!クリエイティブミーティングで危うく採用されそうになってさあ……。」
「…?クリエイティブ…?」