ソラナミダ




「……ごめん、キー、借りるから。」



「…ふぁー…い。」



ガチャっ…



パタン……





「…キー、ここに置くよ。」



「…ハイ。」



「お邪魔します。」



「………はーい…。」



「……。寝室どっち?」




「…………。」



「……おーい?」



「!……はい?」



「寝る部屋!…どこ?」




「ソファー。」



「それ、違うよね。」



「………。」



「平瀬さん?」



「ソファー…。」



「…わかった。ソファーね。」




ヤバい…。



アタマがぐるぐる回っている。



完全に…思考停止。



だから早く…、



とにかく寝たい。







「…眠い。」



「待って、今降ろすから。」



…『降ろす』?



どこから…?



ユラユラゆれるこの心地よい場所がいい。



ここなら…


私、寝れるのに。




「………よいしょ…、と。」




「…………。」




「…寝てるし。」




「…………。」




「…幸せそうな顔…。」




「………幸せ?」



「あ。なんだ、起きてたの?」



「………。」



「…?寝言…?」



「……お父さん…。」



「………?」




「…………おかあ…さん。」




「…………。」




「…行かないで……。」




「…平瀬さん?」



「…か…ないで…。」



「………夢…?」




私は……




夢を見ていた。



あれから…



もうすぐ一年が経とうとしていた。



クリスマスイヴの夜。



光のページェントの中……、



私たちは歩いていた。



少女のように瞳を輝かせる母親と、



それを見て笑う父。




幸せな一日。






アーケード街を軽やかに通り抜け……





私は、先へ



先へと進む。






< 43 / 335 >

この作品をシェア

pagetop