ソラナミダ
「そんなに落ち込まなくても…。酒の失敗なんて誰でもあるだろ?」



「………。晴海くんもあるの?」


「ある。路上で寝て、チャリに轢かれた。」



「ぅわぁお。私より上…。」



「…ね、だから気にすることないんじゃない?」



「……うん、…ごめん。」



「謝ってばっかりだなあ。ねえ、平瀬さんて酒強いの?」



「若かりし頃はね。」



「今も若いでしょ。」



「……。まあ、若いっていうか…。そういうことにしておくか…。」



「…ふっ…、俺も同い年だから若い若い。」



「そか。なら、うん。」



「昨日どのくらいのんだ?」



「生数杯飲んで、あとは日本酒いって……。」



「いけるクチなんだ。」



「…う~ん。」



「…で、結果、何も覚えてないと…?」



「…ハイ、おっしゃる通りで。」



「……面白いのな、平瀬さんて。」



「…え。」



「確かに酔ってて訳わかんないんだけど、ちゃんと会話が成り立ってたし。」



「……?何話した?」



「ん?……忘れた。」



「ああ…そっか。……とにかく、ごめんなさい。そして、ありがとう。」



「俺はここに連れてきただけだよ。」



「いや、もう十分っす。それにチューまでさせていただいて……。」




「…………。」




「……ん?」




晴海くんは……



急に黙った。



「ぶはっ……!も~ダメ、おかし~!!」



しまいには……



腹を抱えて笑い出す始末。



「……?なにが?あれ、何か可笑しいこと言った?」




「されてないよ、キスなんて。」



「…は?」



「キスも何も、無防備に寝てた。」



「………え。アレ?そうなの?」


「そうです。それよりさ、こんな得体の知れない奴にもキスしちゃうほど理性なくなるの?」


「…いや、さあ…?どうだろう。」



でも…


晴海くんは得体が知れない人じゃない。


うん…、友達……?


いや…、それこそ私の勘違いか?



「気をつけてないと。変な男にそんなことしたらとり返しつかないよ?彼氏とかヤキモチやくでしょ。」



「……いないから…。」



「え?いないの?」



「…ん。別れたばっかり。」


「こんないい子いないのに。そいつ勿体ないことしてんな。」


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