ソラナミダ
「あ。都築くん、これデスクにお願い!あと…大至急木村さんに連絡して三ツ葉保険のクライアントとの最終打ち合わせ…えーと、3時からに変更って伝えて。」
「…ハイ!」
あたふたする新人・都築くんの顔も見ずに、私は封筒を手渡す。
「…あ~、あと、宣伝部の山本さんにこれ、ポスター確認。…で、こっちがバイク便。」
「…あのぉ…、えーと。」
「…ごめん、頼みすぎ?メモ書くから宜しく。」
「…あ、ハイ。」
「…わーこちゃんっ。」
「…はいは~い。」
紙コップを片手に、同期の美帆がカニ歩きしながら近づいてきた。
「…まあまあコーヒーでも飲んで休憩しながらいこうじゃない。」
「…でも次から次へと仕事が…。」
「3年前には雑用係だったのが嘘みたいな忙しさだねぇ。てか、昨日泊まり込みっしょ?無理してない?」
「ん~…。けど仕事があるのは有り難いからね。」
「まあねぇ…。あ、アンタが焦っている訳わかった!」
「…なに?」
「もうすぐイヴだもんねぇ…。さっさと仕事を片してのんびりしたいワケだ。」
「…うん、まあ…そうなるかな。なにせ一周忌だからさ、デートの予定もなんにもありゃあしやせん。」
「…あ…!ごめん……。そっか…。そうだよね。」
美帆は急にしゅんとなった。
「…クリスマスに法要?」
「…ううん、遠方の親戚ばっかだし、クリスマスはちょっと…。土曜日にした。」
「…そっか…、自宅で?」
「…お寺。」
「…手配とか大変だったんじゃ…。妹さんも神戸だし、わこ一人で?」
「そうそう、わからなすぎて参っちゃうよ。」
「…あんたは何でも抱え込むから……。たまには息抜きしたり、私んとこ頼ってよ?いくらタフと言えど、アンタの身体が心配だよ。」
「…ありがと、ダイジョーブ!」