ソラナミダ
「…今度は何~?」


「別れた原因!『私、仕事一筋ですから』でピシャリ!!ああ、慰めてあげたいわ~。」


「………違うから。ただ……。」




ただ……


会えない日が続いて、


電話も、メールも、毎日なんて億劫で……



かえりみなかっただけ。



別れようなんて話もしていない。


それどころか、はじめから付き合おうなんて言葉があった訳でもない。


ただ……、



なんとなくいつの間にか一緒にいて…


いつの間にか離れたってだけ。



これを別れたと言わずして、何と言う?



それに……



彼は私に同情していただけ。



両親を亡くし、


仕事もままならず、


自暴自棄になっていた私を……



放っておけなかった。



それだけの繋がり。



今こうして離れたことで…



冷静にわかることがある。



彼にとっての私は、決して恋愛の対象なんかじゃあなくて……


仕事上の、パートナー。



「『ただ』…、何よ?」



美帆は怪訝な顔つきで…、私の言葉を待つ。



「…嫌われただけ。」



「……。わこ…。可哀相なのはアンタの方だったか。」


「慰めてくれる?」


「うんうん、もちろん。早く仕事終わらせて呑みに行こう!」


「とかなんとか言って自分が呑みたいんでしょ?」


「…バレたかあ…。」


「てか、うちら呑み過ぎじゃん?週イチは行ってるわ。」


「…これぞ独身女の悲しいサガかもね。女子会という名の『帰りの一杯』。」


「…ぶっ…、確かに…。」



美帆のいいところ…


それは、ストレートな物言いながらも、ちゃんと相手の痛みをカバーしてくれるところ。








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