ソラナミダ




仕事から帰り、汗だくになっていた私は…、


ひとまずシャワーを浴びようと浴室へと向かった。



脱衣所で服を脱ぎ、ポケットの中身を確認する。



仕事中は…


とにかくここに何でも突っ込む癖があるからだ。



この習慣を忘れると、洗濯物がティッシュまみれになる大惨事も起こりうる。



怠ってらならない作業である。



…と、




「……あ…。」




奥底から出てきたのは、今朝拾ったネックレス。



チェーンの切れた所から、するりと指輪が転げ落ちた。




「…やば…。」


運悪く…


それは洗濯機の下へと潜りこんだ。




結果…



重たい洗濯機と格闘して何とか取り出すと……




私は、柔らかいタオルで、優しく埃を拭き取った。



「…早いとこ持ち主に返さないと。」








焦る気持ちを抑えて、とりあえずシャワーを浴びた。



すぐさまあがると、まずはタオルドライをして…、

着替えて…、



それから、ネックレス片手に…玄関を出た。





同じ4階に住む人の部屋を、一軒一軒回る。



ここの住人は、専業主婦が多い。


なぜなら医者や弁護士、公務員など…


旦那さんが、ある程度高収入を得る職業に就いている人が多いからだ。




だから…、大抵はこの時間、インターホン越しからは奥さんらしき人の声。



けれども……



持ち主は見つからなかった。



真新しい宝石であるならまだしも、古びたシンプルな指輪。



嘘ついて自分のものにしようなんて人は…



いないハズだ。







< 7 / 335 >

この作品をシェア

pagetop