ソラナミダ
休日とはいえ、することは沢山あった。
まずは一週間溜め込んだ家事と……
会社でやり残した仕事。
本当の休日なんて、あったもんじゃあない。
私は仕事モードに切り替えて……
うで捲りをして、気合いを入れた。
掃除機を取り出し、隅から隅へと……
ヘッドを走らせる。
そして……
「あ。こんな所にあった。」
昨夜テーブルに置いたつもりの携帯電話が、いつの間にかベッドの下へと…
潜りこんでいた。
「充電充電っと……。」
携帯を…開く。
…と、
着信3件。
「………!電話…、くれてたんだ。」
いずれも、
昨夜…。
晴海くんからの着信。
私は気づくこともなかった。
それは相手からしたら、無視されたかと思うには…
十分な状況であった。
迷わず……
電話を折り返す。
コール音が20回鳴った所で……
留守電に切り替わる。
「…もしもし、私……、平瀬です。昨日は何度も電話をもらったのにごめんなさい。実は仕事が思いの他遅くなって……。それで、夜分に連絡するのも迷惑かなって思って電話もしなかった…。約束破ってごめんなさい。今度…またコーヒーでも飲もうね。……じゃ…。」
私は……
嘘をついた。
自分の非を認めることよりも……
保身を選んでいた。
いつからこんなに……
ずるい女になったんだろう。
「…さて…と、続き続き。」
携帯を閉じ、それをデニムのポケットに押し込めると……
再び、せわしく働き始めた。
ポケットの中で……
携帯が鳴ることはなかった。