君の初恋だけを

『なんか学生に戻ったみたい〜』


缶ビールを片手にベンチに座ったまま乾杯をする。


『そう?
俺とセンセイはたまにやってるよ?』


大橋くんは悪戯っ子みたいに笑って言った。


『え〜!ズルい!!

私たちも呼んでくれればいいのに〜!!』



他愛もない話をしているうちに
大橋くんはいつも通りに戻った感じになっていた。



『…ふふっ…』


『…何?どうした??』


『な〜んか、元気になったみたいで
良かった〜と思って…』


はは…、と照れたように大橋くんが笑う。



『…なんかさぁ、』



大橋くんは座ったまま、
何処でもない宙を見るように言った。


まるで独り言のように
けれどどこかスッキリとしたような声で。



『…ちゃんと、

好きだ、って伝えてれば良かったなぁ、

て…思ってさ。』



< 128 / 156 >

この作品をシェア

pagetop