君の初恋だけを
君のこと
『この前は本当にごめんね。
今日はいっぱい食べていいから!
…でも、本当にファミレスで良かったの?』
土曜日の昼のファミレスは
家族連れで溢れかえっていた。
君はその光景をただ感情もなく
まるで不思議なものを見るかのように眺めていた。
『…はい。
一度来てみたかったんです。』
『来たことないの?!
ちっちゃい頃とか家族で外食とか…』
『…家族らしいことはしない家なので。
…変ですよね、やっぱり。』
そう言って無理に笑顔を作って
笑おうとしているのをみて、
自分は無神経なことを
言ったのではないかと後悔した。
それと同時に、
初めて会った時から気になっていた
この寂しげな笑顔の理由を知りたくなっていた。
このコのことをもっと知りたい…
自然とそんな気持ちが溢れていた。
『そっか…
家庭もそれぞれだから…。
お家の人もきっとお忙しいのね。』
君は曖昧に笑って、
また周りの家族連れを少し見ると、
メニューに目を移した。