〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 ひたすら廊下を歩く。

 歩くことしか考えてない。

 誰が通っているとか、ここに何があってとか、そんなの考えてない。

 誰かに糸で引っ張られているように家を目指す。

 偽りの性格で学校社会を生き抜いている。
 サッカーのために。サッカーをしていることが原因で、いじめられないようにするために。

 偽りの性格を演じることは、珠理にとって息苦しい。

 そんな息苦しい場所から、一刻も早く抜け出したい。

 そして、本当の、本当の自分の性格に出会いたい。気持ちよくいられる場所に行きたい。


 機械的に、下駄箱にある自分の靴を取る。

 そのまま、まっすぐ、家に向かって走る。

 機械的に家を目指す。

 もし、機械的に夢がかなえられたらなっとつい思ってしまう。

 自動的に、持久走と同じように走る。

 トレーニングで持久走をしていると、走っている最中に辛くなるのに、今は全く感じない。

 特に家に近くなってからは。



 
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