〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 ふと目が覚めた。
 時計を見たら、二時半を示していた。

 提出期限が迫っている英語の課題をやろうと、体を起こした。

 一階に課題のドリルがあることに気付き、部屋を出て、階段を降りた。

 ふと、和室のほうに目を遣ると、

「神よ、剛溜に力を分けたまえ。」

 誓子が必死に祈っている。文机の上に水晶か何かを置いて、文机に向かって、何か変な動きをしている。

 そばにいるミランは、誓子の姿に呆れて寝ているように思える。


 練習試合があった日、剛溜はサッカー学院の二次試験を受けていた。
 剛溜は県の選抜に選ばれたことがあるので、一次試験は免除。
 もし二次が合格したら、三次試験、最終試験と続く。

 まあ、孫の試験合格を祈る気持ちは分かる。しかし、そんなことをしなくてもいいのではっと珠理は思う。
 まったく、と珠理は呆れる。

 寝ているミランをそっと抱いて、課題のドリルを持って珠理の部屋に移動した。
 誓子を避けるために。


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