〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 決戦の時が来た。
 この時を、珠理は心待ちにしていない。

 プレーの悩みは相変わらずだ。相変わらず、判断と体がかみ合わない。こんな状態で決戦を迎えたくなかった。
 プレーの悩みに集中して、将来への悩みは少し薄れかけていたと思ってた。


 しかし、その前日のこと。

 サッカー学院の二次試験の結果が書かれている手紙が、郵便箱の中に入ってた。

 剛溜本人が取り出して、手紙を開けた。

 結果は、合格。

 三次試験の詳しい内容や、場所などが書かれた紙も同封されてた。

 まだまだ先があるが、とりあえず家族みんなで祝った。
 
 でも、珠理は心から祝えなかった。不安と剛溜に対する嫉妬ばかりが募る。

 剛溜の未来はどんどん明るくなる。
 珠理の未来はまだ暗いどん底。

 決戦の前に、将来への不安がまた燃え上がる。


『まだサッカー学院に完全に決まってないから。』

 剛溜は謙遜で言ったが、珠理には嫌味に聞こえた。



  
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