〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 まぶしい太陽を遮る雲はない。梅雨明けが発表され、夏本番。

 そんな気候の中、今日は県予選の決勝。トーナメント制の決勝だ。八チームで競ってだが、今は二チームしか残ってない。
 勝ったチームのみが全国の舞台に上がれる。負ければ、三年生は引退する。

 決戦中の決戦だ。

 城崎ドルフィンガールズはこの大会に出場してから、一度も全国に行けなかったことはない。全国優勝したこともある。

 強豪がここで落とすわけにはいかない。

 
 皆、いつもより念入りに準備体操する。

 大事な大会の試合中に、怪我するわけにはいかないから。

 準備体操中、おしゃべりしている選手はいない。

 会場のO県立競技場に入る前は、いかにも普通の女子中学生だったのに。

 いつもだったら柔軟体操中に、

「痛い痛い痛い~。」

 体が硬いリエが悲鳴あげるのに、それすらない。

 チーム全員、過度に緊張している。
 適度な緊張が大事なのに、これでは大丈夫なのか。


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