〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 ボールを、天井に当たらない高さまでに投げる。

 音に気を付けながら、バスケットボールみたいにドリブル。

 さらに、片足でボールをまたぎ越す。

 もう片方も。

 前屈した状態で、背中にボールをのせる。

 これは、柔軟性を高める練習だ。

 終わったあと、体を起こし、背伸びして深呼吸。


――やっぱり、キャッチングや、セービング、パンチングをしたいな。――

 今あげた言葉は、ゴールキーパーが実際に試合で使う技。

 こんな基礎練習ではつまらないと感じるから、そんなことを思っただろう。

 だけど、ここは体育倉庫。
 一人でやるときは壁に向かって投げ、それをキャッチしたり、パンチしたりする。
 
 その際周りに気をつけなきゃいけない。
 壁にボールを投げたら、思わぬところに当たってしまう。
 ボールが壁に当たって、思わぬところに跳ね返る。

 そもそも、これらは蹴る人がいたほうが練習になる。


 結局、諦める。

 がっくりと肩を落とす。
 倉庫で練習しているときは、いつも思うこと。実現できなくて、諦める。それの繰り返し。



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