〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 落ち込んでいる暇はない。

 ボールを地面に置く。
 右足裏をボールの上にかぶせる。
 
 珠理側にボールを引き寄せるように、ボールを転がす。
 ある程度のところで、ななめ右前へ方向を変える。

 半円を描くようにゆっくり転がして・・・

 ボールが珠理が思っていた方向とは、逆の方に転がってしまった。
 何とか軌道修正。

 簡単に思えて、実は難しい。


 あれこれ苦戦しながら、ボールを転がして“ゆ”を描いた。

 ボールを転がして、ひらがなを描く。そんなトレーニングを今している。


 左足で同じように“ゆ”を描くが、右足よりもっと苦戦した。

 珠理の利き足は右足だから。

 できるだけ右足と同じように左足が使えるように、右の倍ひらがなを描いた。

 “ゆ”、“ひ”、“そ”、“ん”、など。

 珠理が思いついたひらがなを描いた。


 ひらがなを描いているうちに、うっすらと汗をかいていた。

 汗を拭いて、時計を見る。

 あと、五分ぐらいボールをいじれる。

 

 
< 13 / 213 >

この作品をシェア

pagetop