〔完〕 うち、なでしこになるんだから

――焦っている暇はない!――

 
 練習しやすいように制服を崩していたが、それをあらためる。

 体操服の半ズボンの上から、ズボンが見えないようにスカートをはく。
 学校指定のベストを着る。
 最後に、時計をポケットに入れる。忘れ物が無いか、確認する。


 サッカーボールがたくさん入っているかごを、左右にどける。

 すると、“勝手口”である、窓枠のサッシしか残ってないのが見える。

 体が大きい珠理が、ぎりぎり通れるほどの大きさだ。

 仰向けになり、慎重かつ素早く、足から穴を通り抜ける。

 無事外に出られた。だが、雨が降っている。

 素早く、サッカーのかごを元に戻す。勝手口を隠すために。

 雨で濡れないように、小走りで体育倉庫をあとにする。

 テニスコートのそばを抜け、美術室・音楽室などといった教室が集まる校舎を抜け、普通教室が入っている校舎へ。

 うきうきして入ったわけではない。

 むしろ、あまりよくない気分だ。


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