〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 満か来未のどちらかがボールを蹴るだろう。

 満の目の前に、二人相手選手がいる。

 ゴールをわざと隠すためにいる。
 これを一般的には壁という。

 でも、ゴールキーパーが見えなかったらいけない。

 今の状況は、ゴールキーパーの声が欠かせないところだ。

 “壁”の人数を何人にするか、誰をマークするのか。

 ここから点が生まれることもあるから。


 あかりはこのフリーキックに参加するために、珠理を残して上がった。
 珠理は逆に、自分が守るペナルティーエリアの近くまで下がる。

 目の前に広がるスペースがぽっかりが開いていて、心まで開いたような気持ちだ。

 でも、こらえる。

 もし、反撃を食らったら、満と来未がいる。

 だけど、やっぱり不安。満と来未の後ろにボール回ったらどうしようもない。珠理が守るしかない。

 一番いいのは得点入ること。

 そうなってほしい。

 

――ここで一点決めてほしいな。――

 珠理は、遠くにいる味方の姿を見つめるしかない。

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