〔完〕 うち、なでしこになるんだから

――入ってほしいな。
　　　いや、入って！――

　ぴぃ～♪

　満が右足で蹴る。

　“壁”を越して、高く、弧を描いてボールが飛ぶ。

　相手とドルフィンガールズがごちゃ混ぜになって、壁みたいになっている場所。

　ボールがそのままゴールへ入るとしたら、そこは珠理ぐらいの人が立ってたらボール一つ分の高さで頭の上を通過するだろう。

　相手より頭ひとつ分大きいあかりが、ジャンプする。
　ちょうどそこにボールが来た。
　目をつぶり、おでこに当たるように合わせる。

　あかりをマークしてた選手は、下からプレッシャーかけるしかできない。
　こうするだけでも、効果はあるみたい。

　あかりのおでこにボールが当たって、右に方向が変わる。

　ゴールキーパーが右へ、手を伸ばす。

　ボールに届くか、届かないか。
　

「入れ！」

　珠理の声はあかりに伝わらないだろう。

　でも、珠理は言ってまで入ってほしい。

　入って、勝負を決定づけてほしい。


　僅かに届かないか。届くか。

　予想しているうちに、ゴールに吸い込まれた。