〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 確か、珠理が小学三年生ぐらいの話。

 ある日、珠理の学年皆が集められた。
 珠理たちの前で、

『ゴールキーパーをやらないか。』

 とコーチが言った。
 
 真っ先に手を挙げたのが珠理だった。

 ゴールキーパーをやっている選手の姿が、かっこよく見えたから。

 でも、ゴールキーパーはあまり人気がない。実際、珠理以外誰も手を挙げなかった。珠理はそんなの気にしなかった。


 始めたころは、他のポジションもやっていたが、だんだんゴールキーパーとして試合を任せられるようになった。

『女のくせして。
 シュート止められるわけないじゃん。』

 そう言われて悔しかった。

 試合でゴールを決められた時は、

『お前みたいな女がゴールキーパーやるからだよ。』

 っと、いつも珠理がゴールキーパーをやっていることを理由に、大半の選手から責められた。たとえ、珠理のせいではなくても。

 だから、見返してやろうと練習しまくった。

 シュート止められた時は嬉しかった。

 嬉しいから、またもっとたくさん練習した。



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