〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 こうしていくうちに、気がつけば男子よりたくさんシュートを止められるようになっていた。

 でも、珠理の弟の剛溜(ゴウル)と上源希(ウエゲンキ)と唯以外は、珠理の才能を認めてくれなかった。

 きっと、珠理の才能を、他の仲間が妬んだと思う。

 妬まれても、才能は腐らなかった。



――妬む奴ほど、下手なんだから。――

 そう思って頑張っていた。
 その結果なのかもしれない。今のチームでは皆から、才能を認められている。


――あの頃は、本当、苦しかったなぁ。――

 珠理の視線の先にある光景。

 新聞紙を丸めて作ったボールを、男子は夢中で追いかけている。

 珠理は、あの中に入ることはもうない。

 あの中には、かつて珠理の才能を妬んだ者もいる。

 あの時の苦しみは、もう味わいたくない。その思いがあるから。


――今のは、あそこにパス出せばよかったのに。――

 それでも、珠理の頭の中では、サッカーをしている。

 もうやめよう。
 珠理は頭を振って、頭を切り替える。
 

 
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