〔完〕 うち、なでしこになるんだから
「お願いします。」

 頭の中に浮かぶ疑問が、珠理と未撫の声を小声にさせる。
 監督はそんな二人の様子を気にしていない。

「じゃあ、単刀直入に言うぞ。

 二人とも、サッカー協会のU-14遠征のメンバーに選ばれたぞ。」

 二人はどういう意味か分かってない。

「つまりな、U―14(十四歳以下)の日本代表として、色んなチームと戦う。
 今回は、外国のU―14とも戦う予定らしい。

 そう、日本代表のユニフォームを着て、試合に出るんだぞ。」

 信じられない。

 日本代表のユニフォームを着て試合に出るなんて。

 二人とも頭が真っ白。


「二人とも、落ち着いて。
 今回U―14に選ばれたって、将来なでしこになれるとは限らないからね。
 逆に、今回選ばれなかった奴がなでしこになることもあるぞ。

 お前らの戦いは、これからが本番だぞ。」

 やっと頭の中に色が戻ってきた。

 やっと、冷静に物事を考えられる。



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