〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 嬉しい気持ちがこみあげてくる。
 本物の日本代表のユニフォームを着て、試合に出れる。
 想像するだけで、わくわくしてくる。

 だが、珠理が目標と、夢としてる『なでしこ』のメンバーに選ばれたわけではない。

 なでしことは、年齢制限のかからない女子日本代表を指す。

 今回は、十四歳以下の中から選ばれている。

 “未来のなでしこ”とは言われるかもしれないが、選ばれたからって、どこにもなでしこになれる保証はない。


「珠理、未撫。
 今回の遠征で、いろんなことを学ぶだろう。

 一回り、二回り大きくなった姿で戻ってくるんだぞ。」

「はい。」

 二人の返事は、力強い。

「詳しいことは、このプリントを見てくれ。」

 と言って、二人にプリントの冊子を渡した。


――あとで詳しい内容を見よう。――

「以上だ。」

「ありがとうございました。」


 あまりに突然すぎて、夢なのかと思う。
 でも、この話は夢であってほしくない。

 

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