〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 中学に入る前までは、珠理と仲良くしてた。

 でも、今はいわいる“不良”と仲良くしている。
 今の状況は、源希にとって良くないとみんな思っている。


――才能はあるが、だめにしそうだな。
   仕方ないよな。――

 心のどこかで、源希を今の状況を何とかしたいという思いがあるが。

 思春期真っ盛りに、男と女が仲良くしたら学校社会の中で生きていけなくなるから、源希としゃべれなくなって仕方ないと思っている。

 一匹狼の立場である珠理では、多分無理。
 源希に声かける時点で、立場が崩れる。


 ため息の素がのどを通り抜け、口から出ようとする。
 それを飲み込んで口から遠ざける。

 ため息ついても、どうにもならないから。

 あっ。
 数学の教科書とノートを取りに来たことを思い出す。

 後ろを振り返ってから、鍵を差し込んで開く。

 四十五度ぐらいに扉を開けて、教科書・ノートを取って閉める。



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