〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 うるさくて無駄なだけの帰りの会が終わった。


――やっほー。
   サッカーだ、サッカーだ。――

 目にも止まらない速さで教室を抜け出し、クラスで一番早く下駄箱に到着。

 驚くべき速さで靴をはきかえ、校門へ。

 珠理の表情は、靴を履きかえた途端明るくなった。

 学校での表情は暗いけど。


――今日の紅白戦では絶対失点ゼロにするんだから。――

 それを達成したときの自分の姿を思い浮かべると、やる気が出てきた。

 珠理自身の頬を叩き、軽めに走り出す。

 走っているときの顔は、下駄箱にいるときよりも明るい。

 耳たぶより二・三センチ下で切りそろえている髪が揺れている。

 まるで、珠理がうきうきしているのを示しているかのように。


 あと二メートルほどで校門を出る。

 つまらない学校から出られる。

 出れるんだ。
 
 思い切って全力ダッシュで行こうか。

 そうしたらサッカーする体力なくならないかな。


「玉川さん。」

 急停止して振り返る。

「なんですか、いきなり。」

 


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