〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 目の前に、珠理と同じ身長ぐらいの男性が。

 サッカー部の顧問で、数学の先生だ。

 珠理はその先生に教わってないが、この関津市立伴場中学校は比較的小さい学校だから先生の数は少ない。っというわけで、だいたいの先生の顔と名前が一致している。


――ってなると、あれか。あーーー!――

 一気に顔が暗くなる。

 せっかくの気分が台無しだ。


「玉川さん、頼む。サッカー部に入ってくれ。」

 この学校サッカー部は今、一・二年生合わせて九人しかいない。

 サッカーは一チーム十一人だから、二人足りない。

 だから、顧問や部員は、足りない二人を埋めるのに必死だ。
 とはいえど、実は、十一人制のサッカーだと七人いれば試合は成立する。
 それでも、十一人揃えたいらしい。だから、しつこく珠理を勧誘する。

「何度言えば分るんですか。
 うちは、そんな部入りませんから。」

 珠理はその場から立ち去りたい。これ以上、話を聞きたくない。
 その思いしかない。



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