〔完〕 うち、なでしこになるんだから
城崎ドルフィンガールズ
「いってきまーす。」

「ちょっと、珠理、この辺片づけなさ・・・。」


 珠理の母親の声を無視して、家を飛び出すように出て行った。

 無視してるっと言うか、聞こえてない。

 平坦な道を全力を百としたときの、五十パーセントほどの力で走る。

 あっ、下り坂が見えた。

 下り坂は転びやすいし、雨が降っているから、走らないで歩く。歩いてても、重力に引っ張られるように、自然と早足になる。

 小さい時、よく珠理はこの下り坂で転んだ。

 そして、父親に

『走るなっ!』

 って怒られた。


 早くしないと、バスに乗り遅れる。

 三時ぐらいは二十分に一・二本しかない。

 一本乗り遅れたら、二十分ぐらい待たなくてはいけない。
 二十分待っているのは、かなりきつい。

 早く、しかし、走らないで。

 腕時計とにらめっこ。

 道とにらめっこ。

 角を左に曲がり、十メートル先ぐらいにバス停が見える。



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