〔完〕 うち、なでしこになるんだから
「そう、がんばるんだよ。
 じゃあ、あとで定期入れてね。」

 バスの中は数人しかいない。

 これがのちに人が多くなる。珠理のチームメートや、高校生などがこの後乗ってくるから。

 バスの奥へと歩き、一番奥の、五人ほどが座れる座席の直前の二人掛けの席に座った。

 
 珠理はサッカーチームのある城崎市まで、一時間近くバスに揺れている。

 長く感じるが、それは仕方ない。

 中学、高校の部活に女子サッカー部がないから。女子中・高生のためのサッカーチームがあまりないから。

 そもそも、珠理のように中学に入っても、女の子がサッカーを続けられること自体が奇跡なのだ。

 かつて珠理の戦友だった唯も、中学入学を機に辞めた。

 本人も続けたかったようだが、世間体や、環境などの問題で続けられなかった。


 今、唯と珠理は友達じゃない。

 中学入学を機に、だんだん離れていった。

 
――唯との仲はもう、取り戻せられないな。
   だったら、今のチームメートと仲良くしたほうが。――


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