〔完〕 うち、なでしこになるんだから
―― 三十、一、二、三、四、五、六、七、八ぃー。――
ボールが左ひざの上に当たり、左側にそれていく。
慌てて左足をまっすぐに伸ばして、ボールを蹴って軌道修正して、リフティングの記録を続けようとする。
つま先に当たった。
さらに珠理より遠くへ飛んでしまい、ハードルに当たって床に落ちた。
――あーあ、ひざに当てちゃった。
ひざに当たると、変な方向に飛ぶんだもん。――
珠理のほうに戻ってきたボールを手で拾う。
単純に拾うつもりが、ゴールキーパーの姿勢で拾ってしまった。
肩幅より広く足を開き、腕を伸ばし、下から救い上げるように拾う。
――痛っ。――
ゴールキーパーグローブをしていなかったことに今気が付く。気付いても遅い。
拾う際にコンクリートの床と、指が接触したみたい。
血は出てないが、皮膚がめくれて、両手の中指の一部の皮膚がピンク色だ。
――今は血が出てなくても、そののち出てくるかも。――
それで、しばらく両中指を見つめてたが、大丈夫だと思って顔をあげた。