〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 満は無言で、珠理の右隣に座った。
 チームでおそろいのショルダーバッグを下に置いて、足に挟む。肘掛けに傘を寄りかからせる。


「またバスの中で寝ちゃって。
 最近疲れてない?」

「まあ、少々寝不足。」

 珠理は満に向かって苦笑いを浮かべる。

「夜、早く寝な。」
「早く寝ようと思っても、なかなかね。
 勉強しなきゃいけないし。」

 珠理は少し悩んでいる顔をする。どう時間を有効に使えばいいのかと思うと。

「もう、うちなんて勉強どうだっていいから。」

「だめでしょう。
 勉強できなきゃ・・・。」

 そう言った後、珠理は左手で満の右肩を叩く。満は勉強ができないから、しっかりしろという意味で叩いた。

「珠理って、まじめ。」

「真面目じゃないよ。
 あっ。」

 たくさんの高校生がバスに乗り込んできた。

 今止まっているバス停の近くに、私立雲野(クモノ)高校がある。

 その高校は女子サッカー部があって、全国大会に出場したことがあるのだとか。



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