〔完〕 うち、なでしこになるんだから
「珠理、雲野高校に行かないの。」

 満は小声で言ったが、珠理には聞こえた。

「雲野ね。」

 珠理は窓を見る。

 満のほうに振り返って、

「なでしこになると決めたけど、具体的にどのような道筋を経てなるかまでは決めてないよ。」

「内進しないの?」

 城崎ドルフィンガールズは中学生年代を対象とした中学部と、高校生年代を対象とした高等部とある。中学部から高等部に上がることを内進と言う。
 内進は強制ではない。中には中学部を卒業してサッカーをやめたり、他のチームに入ったりすることもある。


「うーーん。ナガモンは?」

「ジュジュと同じ。」
「だよね。」

 満もなでしこになることが夢だ。
 一緒に、同じ代表を背負いたいねっといつも言い合っている。

「今のチームもいいけどね。なんか、スパッと内進するって言えないのね。」

「もっと、ハイレベルなところで、サッカーしたいという思いもあるし。」

 珠理は上の方を見る。


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