〔完〕 うち、なでしこになるんだから
「ジュジュ、ナガモン、起きてー。」

 呼び方からして、二人を知っている人なのか。
 二人のチームメートなのか。

「二人とも。起きないと。もうじき城崎公園に着くんですけど。」

 その人の高い声がバスの中に響く。


「ふーん?」

 珠理がやっと起きた。

「んっ、すみれどうした?」

「もう着くんですけど。城崎公園ですけど。」
「へえっ!!はっ!」

 満は近くにあるチャイムを押す。


「もう押したよ。」
「あっ、ありがとう。」

 慌てて脛当てを、荷物の中から取る。
 脛当てを脛に当てる。足首までおろしていたハイソックスを、脛当てを覆いかぶせるように膝下まで上げる。
 反対も同じようにする。

 サッカーでは重要な脛当て、履けました。

「ジュジュ、ナガモン起こして。」
「そうだった。

 おーい、おきろー。降りるよー。」

 満は半分起きた。でも、もう着く。 
 五すみれ(イツスミレ)は満の左腕をつかみ、立ち上がらせる。珠理は自分の荷物と傘と、満の荷物と傘を持って立ち上がった。


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