〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 ボールをそっと床に置き、軽く、上へ蹴った。
 リフティング再開。

 さっきは、両太ももで蹴ったが、今度は足のつま先。

 試合で手と並んでよく使う体の部位だ。


 珠理のサッカーにおけるポジションは、ゴールキーパー(GK)。

 サッカーの選手の中で、唯一試合中手が使える選手だ。

 手が使える範囲は限られているが。

 もし、ゴールキーパー以外の選手が手を使ったらどうなるか。

 腕が体から離れている状態で、腕にボールが当たったら『ハンド』っということで原則反則を取られる。

 わざとでなくても、取られることが多い。逆に審判が見ていなくて、あとで問題になることも多い。

 
 珠理は手が使えるポジションだが、リフティングも大事だ。

 試合中ボールを蹴ることはよくある。
 ただボールを蹴っても、敵に取られたら意味がない。
 正確に味方に渡せば、攻撃につながる。

 ゴールキーパーは、守備の最後の砦であり、攻撃の始まりでもある。

 だから学校のある日、何もなければ校庭にある体育倉庫にこっそり入って、ボールを蹴っている。

 全ては、なでしこJAPANになるために。

 


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