〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 そうしているうちに、一人、また一人とバスを降りていく。
 珠理は、絆たちより遅く降りる。
 満が降りた途端、深い眠りについた。

 今日起こったこと、全部忘れて。

 深い、深い眠りに・・・

 眠っている。



 ・・・・・・・・・・

「(ば)んば・・・伴場。伴場をお降りになるお客様は、チャイムを押してください。」

 全身に一瞬だけ、高圧の電流が流れたかのように起きた。
 珠理が降りるバス停だ。

 あわててチャイムを押す。

 また寝ていたことに今珠理は気づいた。

 降りるまで荷物がちゃんとあるかチェックする。


「間もなく伴場~伴場。」

 珠理は立ち上がって、動くバスの中を歩く。

 本当はこんなことしてはいけないけど。

 早くおうちに帰りたい。

 外は暗いから、早く帰りたい。

 バスが止まり、珠理はあわてて手すりに摑まる。

 おさまったら定期を出して降りる。

 バスは珠理たった一人を降ろして、去っていった。


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