〔完〕 うち、なでしこになるんだから
「珠理。」

 声の主は誰なのか、呼ばれた本人はわかっている。

「あっ、お父さん。ただいま。」

 自転車のハンドルを握って、車体の側に立っている男の人こそ、珠理の父親の将(ススム)だ。


「その荷物・・・。」
「んじゃあ、お願い。」

 珠理は将に荷物を渡し、自転車のかごに入れて防犯ネットをその上にかける。その間に、珠理は傘をさす。

 将が自転車を押し出すと、珠理は後ろについて行く。

 もう九時を過ぎている。
 
 将は珠理の安全のために、練習が終わってバスを降りたあとから家まで迎えに来てる。

 将はなぜかはよく分からないが、安全のリスクを回避しようと一生懸命だ。

 今歩いている最中にも、珠理を一番道の端に歩かせ、自転車、将と言う順番で並んでいる。

 理由はひったくり防止とかいろいろ言っている。

 あと、絶対に音楽聞いたり、携帯いじりながら道を歩くなっと厳しく言われてる。
 これは弟の剛溜に対しても同じ。


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