〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 道を歩きながら、

「今日はどうだったのか。」

 これは、練習が終わるたびに毎回毎回聞かれる。

「今日は、無失点に抑さえられた。けど、許しそうになった時もある。

 あっ、それに、慣れないセンターバックもやった。」

「そうか、いい経験だったろう。」

 将はふと昔を思い出した。今は選手生活そのものから引退してるが、かつて、日本代表の守備の要として大活躍した。
 “日本の壁”っと呼ばれてた。

 身長百八十八センチ。がっちりとした体格。

 外国の血が入っているわけではないが、日本人離れした体格から、“壁”と異名をとった。

 珠理と剛溜は、そんな父親の恵まれた体格を受け継いだ。

 ポジションは二人とも父親とは違うが、体格がプラスに働いている。


 少々雑談ののち、

「珠理、そろそろ聞きたいことがあるんだけど。」

 暗くてよく見えないが、将が本気で聞いているとうかがえる。



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