〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 “決めるのは珠理”

 本当は、珠理自身ではなく、ほかの人に決めてほしいところだ。

 そっちのほうが楽そうだと思うから。

 この言葉が、心に深く突き刺さる。

 視界が真っ白。頭が真っ白。聞こえる音は、珠理にとっては不快な音にしか聞こえない。

 そんな中、珠理は無意識にうなづいている・・・。

 


「分かったか。」

 この一言で、視界と頭に色が戻った。

「はい。ありがとうございました。」

 無意識に言ってしまった。
 本当は無意識のうちに聞き流していたのに。

 監督のもとを去った時、いろんな感情がよぎってきた。

 辛さ、悲しさ、不安、迷い、疑問・・・。
 プラスな感情は一つもよぎらない。
 それに、監督の大事な話を聞き流してしまったことに対する罪意識も。

 どんどんマイナスな感情がエスカレートする。

 珠理の全身を圧迫する。

 そんな調子で練習に臨んでしまった。






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