〔完〕 うち、なでしこになるんだから
――誰も来ないよね。――
緊張すればするほど、体温が熱く感じる。
外は、長袖ではないと寒く感じる。
でも、今の珠理は半袖を着たい気分。
――来ないよね、来ないよね。――
たぶん、来ない。
珠理は確信した。
スカートのポケットから、アナログ時計を取り出す。今は、十三時十分。
昼休みは十三時三十分まであって、十分休憩後ののちに五時間目。
そろそろ、リフティングやめて、ゴールキーパーらしい練習をしようか。
さて、ゴールキーパー用のグローブでもして・・・
っと普通思うのだが、グローブをする気配がない。素手でやるみたい。
顔の周りをボールが回っているように見える。
左手でボールを持ち、半周回してから、首の後ろあたりで右手に持ち替えて半周回して、顔の前あたりで左手に持ち替えて・・・これの繰り返し。
目にもとまらぬ速さで回している。
これじゃあ目が回らないかなっと心配してしまうが、本人は気にしてないようだ。