〔完〕 うち、なでしこになるんだから

――誰も来ないよね。――

 緊張すればするほど、体温が熱く感じる。

 外は、長袖ではないと寒く感じる。

 でも、今の珠理は半袖を着たい気分。


――来ないよね、来ないよね。――


 たぶん、来ない。
 珠理は確信した。

 スカートのポケットから、アナログ時計を取り出す。今は、十三時十分。

 昼休みは十三時三十分まであって、十分休憩後ののちに五時間目。

 そろそろ、リフティングやめて、ゴールキーパーらしい練習をしようか。

 さて、ゴールキーパー用のグローブでもして・・・

 っと普通思うのだが、グローブをする気配がない。素手でやるみたい。


 顔の周りをボールが回っているように見える。

 左手でボールを持ち、半周回してから、首の後ろあたりで右手に持ち替えて半周回して、顔の前あたりで左手に持ち替えて・・・これの繰り返し。

 目にもとまらぬ速さで回している。
 これじゃあ目が回らないかなっと心配してしまうが、本人は気にしてないようだ。




 
< 9 / 213 >

この作品をシェア

pagetop