〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 次は珠理が攻撃、剛溜が守備の一対一だ。

 珠理はボールを適当に蹴りながら、


――剛溜はいいな。
   サッカー学院から日本代表になろうとしてるんだから。――

 剛溜は道が決まっている。

 しかし、珠理はまだ決まってない。

 今のチームの高等部に上がる。なでしこに卒業生を送っているが、日本代表になれる気がしない。
 はっきりとした根拠はない。レベルの高いところで鍛えたいという思いが、あるかもしれないが。

 今のチームよりもっとレベルの高いチームで鍛え、チームで大活躍して、なでしこになる。
 なでしこの正ゴールキーパーとなって、試合で大活躍。
 そして、世界一になって、その立役者になる。

 妄想すると楽しい。けど、現実を見るとシャボン玉のようにはじける。

 

――はあ、ますます、落ち込むわぁ。――

 って、いつの間にか剛溜にボール取られてる。

 それでも怒らない、気にしない。
 今の自分じゃあ、剛溜の相手にならないとわかったから。



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