〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 珠理がぼおっと立っていると、

「お姉ちゃん、シュート。」

 ようは、ゴールキーパーがいるときのシュートを練習したい。

「ここは固い地面だから無理よ。
 やるんだったら、城崎公園に行かないと。」

「あっそ。じゃあ、行こうよ。」

 剛溜は本気だ。

「ちょっと!!
 城崎公園ってどこにあるか分かってる?バスで片道一時間かかるところよ!」

 珠理は城崎公園に行きたくない。
 珠理は定期があるからいいけど、剛溜は小学生だから小児料金で行けるが、バス賃がかかる。

 っというより、剛溜の相手はもうしたくない。
 剛溜の相手になれないから。
 やる気のない自分がやる気のあるやつの練習相手をしたら、相手までやる気が下がる。

 もう、今はサッカーやれる気分になれない。家に帰りたい。


「ゴールキーパーがいるつもりでシュート打てば。」
「あっそ。」

 剛溜は珠理から目をそらし、ボールを足で動かして離れた。

 ここだと思った位置からボールを蹴った。

 本当は家に帰りたかったが、一人残すわけにはいかないから、剛溜の様子をただ見守るしかなかった。






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