〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 

 ぴぃ~♪

 審判の笛の音が、珠理の耳に鋭く突き刺さる。
 珠理は我に返った。

 辺りを見渡すと、ペナルティーエリア(サッカーのコートでゴールの近くにある長方形の区域より、何倍も広い長方形の区域)のすぐ近くで、相手チームの九番の選手のが倒れている。
 九番の選手に、あかりは手を差し伸べようとしている。

 珠理はこの状況から、あかりが九番の選手を倒したと推測する。


 珠理のすぐ近くにいた梗子に、

「これフリーキック(FK、ペナルティーエリアの外で守備側が反則を犯した時に、ペナルティーとして、攻撃側が相手の妨害を受けずに、ボールを蹴って再開する)になりそう?」

「そうだね。」

 梗子の表情は、まずいぞっと言っているような気がする。

 
――フリーキックか。面倒臭いんだよね。――

 審判は腕を横に掲げ、指の先は珠理が守っているゴールを示している。

 直接フリーキック(蹴る人が直接ゴールを狙ってもいいフリーキック)を示している。






  
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