〔完〕 うち、なでしこになるんだから

――あっ、入ってしまった。
   どうしよう。どうしよう。――

 思うように体が動かなかったからだ。思うように体が動かなかったから、ああなってしまったんだ!

 悔しさと、罪悪感でいっぱいだ。


 珠理の記憶はそこまでしかない。

 どの時間にどんなプレーしたか。相手はどんな感じだったか。
 それよりもっと深刻なのは、結果を覚えて無い。
 失点数を思い出せない。そもそも失点したかも分からない。

 いつもは細かい所までではないが、どんなプレーしたか覚えている。
 最低限、失点数は覚えている。

 これはおかしい。

 どういうことか。

 いつの間にか練習試合終わってて、そのまま帰ってきて。

 貴重な時間を無駄に過ごしてた。

 もう二週間経てば、『全国U-15地域サッカークラブ大会県予選』が始まる。


 それが分かったとたん、珠理はますます焦る。

 自分は何やってたんだ。

 でも、将来どうすればいいのか分からない。
 プレーをどうすればいいのか分からない。

 珠理一人しかいない部屋。

 ベッドに顔を付けて泣いた。

 感情が爆発した。




 
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