Wild Rock
雨は降らなかったが、空は厚い雲に覆われ、季節の変化を継げる雷が都市に轟いていた。
市民はそんな中でも、マリア様のミサが聞きたくてやってくる。
刻限に近づく5分前。
マリア様はあたしの胸に手を翳し、水色の十字架のタトゥを胸に刻んだ。
もう一つの、東のマリアである聖女の証。
マリア様はいつもの笑顔で、不安な顔のあたしの頭を撫でてくれた。
マリア様は教会へのドアを開け、ミサを始めた。
けど、あたしは院長と控室で待機している。
なぜかはわからないが、院長も不安な表情になって十字のネックレスを握りしめている。
小さなあたしでも、その場の空気は読めるし、何より『聞こえる耳』を持っているから、院長が何かに怯えているのがわかる。
「シスター=ベルテ。何であたし達だけがここにいなきゃならないの?」
振り返らずに言うと、院長は何も言わなかった。
パイプオルガンの音が響き、マリア様率いる聖歌隊の歌が始まった。
市民の、悲鳴とともに…。