Wild Rock
ドアを開けようとすると、院長に腕を引っ張られて止められてしまった。
よく響く皆の悲鳴と血飛沫の音。
そして魔族達の楽しげなげたげたしい声。
それは確実にマリア様を狙っていた。
「離して!」
「ダメよルーチェ! マリア様からの最期のお言葉なのです!」
震える声で言われても、マリア様が犠牲になるのだけは絶対に嫌だった。
あたしは院長を蹴り飛ばし、ドアを開けた瞬間、生暖かいものが顔にかかった。
辺りは、赤い、紅い、朱い海。
マリア様も手傷を負わされ、荒く息をはいていた。
相手は巨大な赤い羽根を持つ獅子。
「サ…サーガタナス! おぉぉ…まさかこんな…っ」
院長はその魔獣を見て青ざめていた。
あたしもその名は知っていた。
サーガタナス、それは地獄の慮団長であり、あのルーシュ=デモンに直接仕えているという高位魔獣。
そんなもの相手に立ち向かっているなんて…!!