先生あのね?
どういうことだろう。
理恵は今日、大好きな人に胴上げの約束を果たしてもらうはずだった。
大好きな人に誉めてもらって
笑いあえるはずだった。
黙って表に
点数を記入して
塾を後にした。
パタン
扉を閉めると
途端に涙が溢れた。
あとからやって来た生徒たちが
不思議そうな顔で理恵を見て
中に入っては驚きの声をあげていた。
前川は
みんなに好かれてた。
だからみんなが悲しむんだ。
もともと
理恵だけの前川ではないのに
特別になった気で浮かれてた。
だから
前川がいなくなることを知らなかったのが
悔しくてつらかった。