ありきたりな恋
4.卒業
「・・・・んっ」
聞きなれた着信音が鳴り響き、床に転がったバックから携帯電話を取り出すと、そのままキーを押した。
『佐伯、お前、今、どこだ?』
「えっ?羽柴先生?家ですけど」
『いつの間にかいねえし、心配させんな。今、そっちいくからちょっと待ってろ』
有無も言わせない強引な口調で一方的に言われ、電話を切られると、外からクラクションが聞こえた。
気になって外に出ると、黒の高そうな車が止まっていて、そこから羽柴先生が降りてきた。
「はやっ」
「もう帰ったとは思ったけど、念のため連絡したんだ」
「どうしたんですか?」
普段着ている白衣ではなく、スーツの上にコートを羽織った姿だったから、あまりにもかっこよくて。
ドキドキしながら、私は冷静という仮面を被った。
「卒業式、お前出られなかっただろう。卒業証書持ってきた。」
卒業式は二次試験で京都だった。
もともと式典などのかしこまった感じは好きではなかったけど、少しがっかりしていた。
みんなと分かち合えなかったということだけではなくて、先生から卒業証書を受け取りたかった。
「ありがとうございます。記念になります」
お礼を言って、証書と筒を受け取った。
「お前はオレが初めて教員になって、一番優秀な生徒だよ」
「ありがとうございます」
生徒、という言葉が重くのしかかった。
うちの両親の年の差と同じ5歳差だけど、「先生」と「生徒」だから・・・
卒業しても「恩師」と「教え子」だから・・・・
そう聞こえた気がした。
先生からすぐ視線をそらし、深呼吸をしてから頭を下げた。
「先生、一年間、お世話になりました。京都行ってもがんばります」
「ああ」
「それじゃあ」
さよなら、という言葉を言わず、背を向けた。
「小泉先生によろしく」
「えっ?」
急いで家の中に入ると、玄関に倒れこんで、小さい頃のように泣き出した。
「・・・・せんせ、すき」
彼には伝えることができない言葉を何度も何度もつぶやきながら・・・・・
そして、予定より早く翌日の朝には、横浜を離れる決心をした。
新しい恋をするまで帰らない、と心に決めて。
この日が私にとって、卒業式だったのかもしれない・・・・
「・・・・んっ」
聞きなれた着信音が鳴り響き、床に転がったバックから携帯電話を取り出すと、そのままキーを押した。
『佐伯、お前、今、どこだ?』
「えっ?羽柴先生?家ですけど」
『いつの間にかいねえし、心配させんな。今、そっちいくからちょっと待ってろ』
有無も言わせない強引な口調で一方的に言われ、電話を切られると、外からクラクションが聞こえた。
気になって外に出ると、黒の高そうな車が止まっていて、そこから羽柴先生が降りてきた。
「はやっ」
「もう帰ったとは思ったけど、念のため連絡したんだ」
「どうしたんですか?」
普段着ている白衣ではなく、スーツの上にコートを羽織った姿だったから、あまりにもかっこよくて。
ドキドキしながら、私は冷静という仮面を被った。
「卒業式、お前出られなかっただろう。卒業証書持ってきた。」
卒業式は二次試験で京都だった。
もともと式典などのかしこまった感じは好きではなかったけど、少しがっかりしていた。
みんなと分かち合えなかったということだけではなくて、先生から卒業証書を受け取りたかった。
「ありがとうございます。記念になります」
お礼を言って、証書と筒を受け取った。
「お前はオレが初めて教員になって、一番優秀な生徒だよ」
「ありがとうございます」
生徒、という言葉が重くのしかかった。
うちの両親の年の差と同じ5歳差だけど、「先生」と「生徒」だから・・・
卒業しても「恩師」と「教え子」だから・・・・
そう聞こえた気がした。
先生からすぐ視線をそらし、深呼吸をしてから頭を下げた。
「先生、一年間、お世話になりました。京都行ってもがんばります」
「ああ」
「それじゃあ」
さよなら、という言葉を言わず、背を向けた。
「小泉先生によろしく」
「えっ?」
急いで家の中に入ると、玄関に倒れこんで、小さい頃のように泣き出した。
「・・・・せんせ、すき」
彼には伝えることができない言葉を何度も何度もつぶやきながら・・・・・
そして、予定より早く翌日の朝には、横浜を離れる決心をした。
新しい恋をするまで帰らない、と心に決めて。
この日が私にとって、卒業式だったのかもしれない・・・・