恋なんてミステリアス
玄関のドアが閉まる音の後、廊下を歩いて来る足音が近づいて来た。
「帰って来たわね」
母の言葉の直後、キッチンのドアが開いた。
「帰ってたのか?」
そう言うと、特別な事は何も無いかのようにリビングに入りテレビのスイッチを入れると、「お茶」と一言発しておもむろに腰を下ろした。
真理恵は、変わらないなと思ったが、それを言葉に出すことは控えた。
夕食時は以前同様に静かもので、テレビからのアナウンサーがニュースを立て続けに読む声に混じってご飯を食べる食器の音が小さくカチャカチャと鳴るだけであった。それでも一人の食事よりは有意義で、「それ取って」というと、誰かの手が伸びて欲しい物が目の前に置かれる。真理恵は、この静かな雰囲気を重たい事だとは少しも感じなかった。程よく夕食も終わった時、父が口を開いた。 「入江さんとこのサッちゃん、結婚したぞ。でもな・・・」
私は誰の事だろうと思ったが、ハガキの名前だと気付くのに時間は掛からなかった。
「でもって何?」
続きを言いたいのか言いたくないのかは分からないが、私が気になったので聞いてみた。
父はお茶を飲み干すと、その後、一年足らずで別れて家に戻って来たと言った。
真理恵の脳の回線がフル稼働し、同級生の顔と名前が次々に映し出される。それはまるでデジカメで撮った写真のようではあるが、最後のほうに近づくにつれてセピア色へと変わり、それも徐々に色褪せて見え始めると、真理恵は急いで二階に上がり、本棚から卒業アルバムを取り出した。 三年一組の写真を並び順に目を通す。見落としが無いように名前と顔を良く見比べて進む。
「あれ、居ない。じゃあ、三年の時じゃないのかな?」
次の二組からページを捲っていくと五組で手が止まった。名前の上の顔写真、真理恵にはやっぱり見覚えが無かった。
「帰って来たわね」
母の言葉の直後、キッチンのドアが開いた。
「帰ってたのか?」
そう言うと、特別な事は何も無いかのようにリビングに入りテレビのスイッチを入れると、「お茶」と一言発しておもむろに腰を下ろした。
真理恵は、変わらないなと思ったが、それを言葉に出すことは控えた。
夕食時は以前同様に静かもので、テレビからのアナウンサーがニュースを立て続けに読む声に混じってご飯を食べる食器の音が小さくカチャカチャと鳴るだけであった。それでも一人の食事よりは有意義で、「それ取って」というと、誰かの手が伸びて欲しい物が目の前に置かれる。真理恵は、この静かな雰囲気を重たい事だとは少しも感じなかった。程よく夕食も終わった時、父が口を開いた。 「入江さんとこのサッちゃん、結婚したぞ。でもな・・・」
私は誰の事だろうと思ったが、ハガキの名前だと気付くのに時間は掛からなかった。
「でもって何?」
続きを言いたいのか言いたくないのかは分からないが、私が気になったので聞いてみた。
父はお茶を飲み干すと、その後、一年足らずで別れて家に戻って来たと言った。
真理恵の脳の回線がフル稼働し、同級生の顔と名前が次々に映し出される。それはまるでデジカメで撮った写真のようではあるが、最後のほうに近づくにつれてセピア色へと変わり、それも徐々に色褪せて見え始めると、真理恵は急いで二階に上がり、本棚から卒業アルバムを取り出した。 三年一組の写真を並び順に目を通す。見落としが無いように名前と顔を良く見比べて進む。
「あれ、居ない。じゃあ、三年の時じゃないのかな?」
次の二組からページを捲っていくと五組で手が止まった。名前の上の顔写真、真理恵にはやっぱり見覚えが無かった。