恋なんてミステリアス
第二章 雑踏の街
 街に来るのは久しぶりであった。人混みよりも静けさが性に合う私の性格には、この雑踏は賑やか過ぎてすぐに疲れてしまう。普段は郊外のショッピングセンターで事足りる生活をしているのだが、今日はそんな事も言ってはいられない。中学生の時からの友人がこの街の病院に入院したからである。
 普段、車を運転する私は、めったの事では電車やバスには乗らない。乗るとすれば、飲み会の時だけに限られるのであるのだが、今日は朝から車検に出して代車を借りている状況。馴れない車で街中の運転は少々心許ない。それで電車を利用したのだが、駅から歩くのに疲れるのは普段のだらしない運動不足のせいであろうか。たまにはジョギングでもしようとかいう決行も出来ないアイデアが脳裏をかすめたりもした。 

 途中、見舞いの品を購入し、街の中心程に位置する個人としては比較的大きめな病院の出入口に到着した。前もって聞いていた部屋番号を忘れないように書いたメモ。駄目だ。いくらバッグの中を探しても見つからない。忘れないように書いたメモを忘れるなんて、どうにかしてる。
 一階のナ―スステーションで入院患者の名前を告げ部屋を聞くと、忙しく動かしている身体を止めて詳しく教えてくれた。私だったらどうだろうか。もしも、私があの立場だったら丁寧な対応が出来るだろうか。多分、自分の忙しさを優先し、面倒臭い表情を顕にするに違いない。そんな事を考えながら教えて貰った通りのルートを辿った。
< 3 / 36 >

この作品をシェア

pagetop